ロースター対談

本日は、出店者であり、庄内でスペシャルティコーヒーを日々焙煎している3人が集まって下さいました。

 

珈琲島 本間さん 焙煎歴18年。一番のベテラン。さすがに的確なお答えが多かったです。

千一珈琲 岡部さん 身振り手振りをまじえて真剣に話して下さいました。

パラディーゾ 後藤(司会、聞き手)。イベント準備で若干バテ気味です。

 

皆さんは、焙煎ってどんなことをするのかご存知ですか?意外と知られていないですが、とっても重要なものなんです。そういったことも含め、コーヒーのこと、お客様のこと、これまでとこれから、、、色んな話が飛び出しました。

 

ではいってみましょう。

 

後藤「まず最初にお窺いしたいのは、コーヒー焙煎に関わるようになったいきさつです。私と岡部さんは、趣味の世界から入って創業、でいいと思うんですが、珈琲島は創業は何年ですか?」

本間「1999年です。それまではオフィスコーヒーがメインで長くやっていました。自家焙煎を始めたのと同時に酒田店、鶴岡店と続けてオープンしました。」

後藤「最初から本間さんが焙煎していましたか?」

本間「いいえ、最初は父がやっていました。少し経って『お前がやれ』と言われて。コーヒーに興味が出てきた頃だったのでちょうど良いタイミングでした。面白いと思いながらやっていました。」

後藤「こぴあ店内で焙煎していたそうですね。焙煎機の煙突から鳩が入ってきたという有名な逸話もありますが。」

本間「ありましたね。」

後藤「焙煎中じゃなくて良かった!
最初からスペシャルティコーヒーでしたか?」

本間「いえ、その頃はまだなかったです。1999年にようやくCOE(国際品評会)が始まって。まだ日本には入ってきてなかった。焙煎の情報も少なかったので、手探りで、他店の味を参考にしたりしてやっていました。」

後藤「さかいさん(さかい珈琲、東京練馬。生豆を輸入し全国に供給もしている)から仕入れたのはその頃からですか。」

本間「いえ。ずっと後ですね。」

後藤「これはぜひ言いたいんですが、自分が東京に住んでいた時に、近所にあって通っていたのがさかい珈琲だったんです。東京には実は当時あまり美味しいコーヒー豆屋がなくて、堀口珈琲とさかい珈琲くらいだった。2010年に鶴岡に帰る(Uターン)準備をしている時に、珈琲島に初めて立ち寄ったら、自分がいつも飲んでいるコーヒーがそこにあったので、とてもビックリしたんです。」

本間「偶然ですよね。」

岡部「自分は、母親が喫茶店をやりたくて、ずっと家ではハンドドリップ。そんな環境でした。あと料理やパンを作るのも好きで。ロードバイクをやっていた時に、今より20kgくらい痩せてたんですけど(笑)、カフェバッハ(東京の名店)に行きなって仲間から教えられて、行ったら「こんなコーヒーは飲んだことがない」と思って、それでスペシャルティコーヒーに出会って。バッハでは焙煎講習をやっていたのでそれに通いました。」

後藤「自分は、最初は手網焙煎をしていました。でも全然上手く焙煎できなくて、胃を壊したりとか。生焼けだったんですね。その後堀口珈琲とかNOZY COFFEEのカッピングセミナーに通ったりして、段々分かるようになっていった。情報が出てきた頃だったので、やりやすかったですね。でもなんといってもさかい珈琲です。さかいさんの焙煎は、ベースのクリーンカップ(透明性、スペシャルティコーヒーの基本と言われる)がとても安定してるので、今でも参考にしていますね。」

 

後藤「焙煎ってどんなことをするのか説明すると・・・」

本間「生豆のままでは飲めないので、飲めるようにする作業ですね。」

後藤「具体的には、10~15分くらい焙煎機で生豆に熱を加えて、水分を抜いた後に乾熱調理をすると。早い段階で終えれば浅煎りでフルーティーになるし、煎り込んでいけば中~深煎りとなって、だんだん苦味が出てくると。どこで止めるかの判断も重要です。

お客さんに合わせて焙煎を変えたりしますか?」

岡部「ご年配の方は深煎り下さいという方が多いですね。最近は若い方が来て『酸味のあるやつ下さい』と言われることが結構ある。2極化している印象があります。」

後藤「多くの方は『酸味の少ないやつ下さい』と仰います。どこも同じだと思うんですが、そんな時はどれをお勧めしていますか?」

本間「クラシックローストという商品があるのと、深煎りのブラジルなどです。」

後藤「イベントに酸味のあるものしか持っていかないことが結構あって、その時『酸味のないもの』と言われると、『全部酸味はありますが、フルーティーでどれも美味しいですので飲んでみて下さい、その中でも比較的穏やかなのはこちらで…』など説明しますね。今までコーヒーって飲めなかったけど、これなら飲めます!と言ってくださる方もいます。それとは別に、酸味が好きという方も一定数いらっしゃると思います。」

岡部「多いのは中~深煎りを好む方ですね。」

後藤「私たちはフルーティーなコーヒーの良さを知っているし、お勧めしたい気持ちもある。皆その辺りの葛藤はありそうです。ウチはオーダー焙煎なので、深煎りを求められることも多くて、深煎りにするんですが、ちょっとだけ浅めにしたりします。

そんな風に味のバランスを取るのも焙煎人の力量だと思います。その豆の良さと、お客様の好みのバランスを取ること。」

 

後藤「他のお店は意識しますか?」

本間「特にここというのはないですけど、おみやげに豆をもらうことが多いので、結構飲んでいると思います。有名じゃなくても美味しいお店はあるし、深煎りでも美味しいところはあると思います。」

岡部「自分はあまり参考にしないです。自分の焙煎がブレてしまうので。カフェバッハのブレンドの味は記憶しています。あとは、お客様からのフィードバックがあるので、それで十分です。」

後藤「焙煎の評価というと一般的にはカッピング(コーヒーの評価手法)だと思うんですが、どのタイミングで評価していますか?」

岡部「焙煎の翌日、ロースト香が抜けた後。あとは、商品を店頭に出す時、下げる時。下げる時は当然味は抜けているんですけど、その時でもお客さんは買っているので、そこでも評価しています。」

本間「カッピングはその日のうちにしています。カッピングはあまり重要視していなくて、ペーパードリップとクレバー(ドリッパーの一種)で味を見ます。お客様が飲んでいるであろう条件で評価しています。」

後藤「自分もカッピングとハリオ(V60ドリッパー)で評価します。好きな抽出は他にあるんですが、お客様はドリップがほとんどなので。」

 

後藤「コーヒーの『種子からカップまで』における焙煎人の役割とは?」

本間「豆を選ぶことから始まって、自分が考えるその豆の魅力と、お客様が美味しいと思うポイントにその豆を持っていくことですかね。」

後藤「大手の焙煎人のように分業でなくて、皆さんお客様の前にも立っているので、反応も分かりやすいですよね。」

岡部「私は、コーヒーだけでなく、生産国のことを説明したりします。ニカラグアの政情不安とかインドネシアの災害の話、世界情勢も含めて。スポーツに絡めて話したり。そうやって生産国を知ってもらったり。ブラジルについては訪問しているので、説明できるし。」

後藤「どんどん美味しいコーヒーが入ってきて、華やかな部分を出そうと思えば出せるんですけど、そのまま出しても敬遠されることが多いので、いかに焙煎で味のバランスを整えて、お客様に気に入ってもらうようにするか。そこが役割で、重要なところだと思います。」

 

後藤「最後に、自分が焙煎して一番感動したコーヒーを教えて下さい。」

本間「まだ、ないですね。」

後藤「ないんですか!沢山感動させてもらっている気がしますが。」

本間「ありがとうございます。やっぱり自分で焙煎していると、まだ上があるんじゃないかと思うんです。」

岡部「まだ開店1年で、これからですが、最近扱っている『エチオピア イルガチェフ コケ』は、ちゃんと味が出せた、と思っています。リピートしてくださっている方もいらっしゃいます。」

後藤「私はケニアですね。常に素晴らしいと思います。通年切らさないように努力しています。」

 

後藤「鶴岡にはチェーンのコーヒー屋さんが来ていますね。コメダ珈琲もできて、スターバックスもできます。11月中旬と聞いています。」

本間「いいんじゃないですか。」

岡部「ドライブスルーの場所、交通渋滞が心配です。」

後藤「道が狭いですよね。交通量も多い場所だし。」

岡部「事故だけは起きてほしくない・・・」

3人「本当ですね・・・」

とライバルになるかもしれないのに心配している優しい3人なのでした(終わり)。